はじめに

パソコンスクールを営む人間がパソコンスクールの選び方に関する文章をつづるというのはおこがましいような気もしますが、批判を恐れずに思うところを記してみました。
 パソコンやスマホがが文房具の現代においてこうしたデジタル機器を扱う技術というのは欠かせないものとなってきました。字を読めない人が現代の日本人にはほとんどいないようにデジタル機器を扱えない人がいなくなる日も近いと思われます。
 このような時代背景からパソコンスクールは雨後のたけのこのように街にあふれました。しかし間違ったスクールを選んでしまってお金と時間の両方をどぶに捨ててしまっている人がたくさんいるのも事実です。
 これからパソコンを学ぼうとする人たち、あるいはすでに学んでいる人たちには同じ過ちを繰り返していただかないためと、私どものスクールのポリシーを理解していただくためにこの冊子を作りました。 この小冊子を作るきっかけとなったのは私どもの生徒さんのお1人の話です。
 その方は春日部市内のスクールを3ヶ所経験して私どものスクールに"安住の地"(その生徒さんの言葉)を見出していただけたとのことでした。この方のお話や他のスクールを経験なさった方々のお話もこの冊子の中には含まれています。やむにやまれず、ペンをとる代わりにキーボードをたたいたといったところです。
あゆみパソコンスクール 松永
※このページは1990年に発行した「失敗しないパソコンスクール選び」を一部加筆修正して掲載しています。一部内容的に古い部分もありますが、当スクールのぶれないポリシーを理解していただくためにあえてそのままにしております。ご了承ください。

 一人一台は当たり前

   コピー機で原稿をコピーしてはさみで切り取り、糊をつけて別の紙にはりつける、といった普通の作業では目も手も足も使います。五感の多くを使う作業ほど人間の体に経験として刻み込まれるので頭にも記憶されやすいことは知られています。
しかし、パソコンではすべての作業を画面上で処理しますので実感がなかなかわきにくいのです。
   他人のパソコン操作を脇から見ていると次々と画面がまるで手品のように切り替わります。これと同じ操作を自分がするときなどに、たった今見ている画面をそっくり印刷できたらなぁと思うことは頻繁にあります。こんなとき、パソコンにプリンタがついていなかったらどうしようもありません。キーボードのPrintScreen(通常右上にあります)を印刷したい画面でたたき、アクセサリーにあるペイントを起動して編集―貼り付けーファイルー印刷でプリンタからその画面を印刷できるのです。(最近ではSnippingToolというソフトがアクセサリの中にあります)
生徒さんが欲しい画面を自由に印刷できるようになっていなければなりませんし、スクール側もインク代をけちっているようではいけ ません。パソコンスクールにとって最も重要なのは生徒さんによりよく理解してもらうことだからです。画面上で文書を作成しても印刷してみないとミスにも気づきにくいのです。パソコンがLANで結ばれて印刷機を複数のパソコンで共有している場合もあるかもしれませんが、気兼ねなく印刷できるようにパソコン1台にプリンタ1台が当然です。

 1日に5時間も6時間も教わるのは拷問

 ホテルなどで缶詰にさせられてパソコンを勉強する中高年の方がおられますが、まず成果はあがりません。筆者も某メーカー系のスクールにもぐりこんだことがありますが、―ちなみに2日間コースで1日5時間―。終わった後に残ったのは知識ではなく思い疲労だけでした。効果はほとんどなし。
 これも当然のことです。人が集中できるのはそんなに長い時間ではありません。ましてや新しい事が次々と出てくる場合、覚えきれるものではありません。間違えたらどうしようとか、聞いたら笑われるかなといった気持ちにもなります。人が1回で覚えられる量にも限度があります。こうした集中トレーニングをわたくしどもは「非人道的スクール」と呼んでいます。

 入学案内書がないなんて論外

 人が長年何かに取り組んでいれば、難しく言えば「理念」が生まれてくるはずです。理念を掲げて地域社会に貢献してゆくのが務めです。それなのに時間と費用とコース説明だけの紙一枚というのはあまりにも寂しすぎます。 理念と言っても決して小難しい理屈は要らないわけでして、例えば和菓子屋さんがお客様によりおいしいものを提供しようと何かにこだわって日々努力しているのも立派な理念です。
 あゆみパソコンスクールの理念もきわめてシンプルです。
生徒さんにいかにしてよく理解してお帰りいただくか。これがすべてです。
 そのためにテキストから指導法から日々努力改善しています。

 なぜ費用を一括納入させるのか

   費用の納入方法には一括納入と月謝制、チケット制などがあります。一括納入はスクール側にとって、最も好都合な納入方法です。たとえ、生徒さんが不満を感じて途中で通学しなくなったとしても費用は前納されているわけですから痛くも痒くもありません。返金も受け付けないきまりになっているのが大半です。(中途解約を巡って消費者とのトラブルが相次いだため、パソコン教室と結婚相手紹介サービスについて、平成16年1月よりやっと受講費のクレジット契約を中途解約できるようになります。)
   指導方法・指導システム・インストラクターの質に自信があれば、なにも一括納入などしてもらう必要はないわけです。月謝制で十分なはずです。月謝制は生徒さんにとっても安心ですが、スクール側にとっても良い緊張感を与えます。充実した授業をしていなくては生徒さんは翌月から来なくなってしまうからです。一括納入させるところは指導の質に自信がないからだと思います。
  チェーンの味より専門店の方が美味しいのが当たり前
山椒は小粒でひりりと辛い。わたくしどもが目指すのは日本一教え方がうまくて楽しいスクールです。
   この目標を達成するために教材からインストラクターのトレーニングまで日々精進しています。 私どもにとって大切なのはパソコンで困っておられる方々です。そうした方々がパソコン恐怖症をなくしていただき、パソコンを仕事に生かしていただいたり、就職のための武器をもっていただいたり、パソコンを楽しみの道具としていただいたり、その方なりのパソコンライフをバックアップするのが私どもの責任と考えています。
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 無料体験があって当たり前

 パソコンスクールで無料体験がないのはどう考えても怠慢です。私自身が何かを学ぼうとしてスクールを探すときには無料体験がある所を探します。入学するにはなにがしかのお金を払うわけですし、それを無駄にはしたくありません。
 入ってすぐに「こりゃー駄目だ」と思っても、お金が返ってくるわけでもありませんし、失った時間を取り戻せるわけでも ありません。
 私どもは無料体験は当然ながら大歓迎です。ただ、見学は実施していません。生徒さんの立場に立ったとき自分が パソコンに向かっている姿をだれかにのぞきこまれるのはいやだろうなあ、と考えますので単なる見学はご遠慮いただいております。
 生徒さん一人一人のプライバシーを尊重したいのです。

 きちんとしたテキストがあって当たり前

   テキストもなくプリントで済ませているところがまだあるようですが、やはりきちんとしたテキストが欲しいところです。ただ、市販のテキストには使えないものが多いようです。全部に目を通したわけではありませんが、スクール用の教材やチェーンの教材にも見るべきものがありません。
 それで当スクールも最初はしかたなく、自分のところで作り始めました。類題を豊富に入れて作ってゆくうちに今度はきちんとした製本もしたくなりました。これからもより良い教材を開発してまいります。
 あゆみパソコンスクールの教材は次の八種類です。パソコン入門 WORD基礎①②③EXCEL基礎①②③EXCEL応用①②③EXCEL応用関数①②③の12冊です。冊子にはしていませんが、この他にプログラミングのVBS,VBA、JavaScript、Html入門があります。一部テキストのない講座もありますが、あまりにも変化の速いソフトの場合テキストを作成していませんが、授業時にハードコピーをしてゆきますのでそれが十分に立派なテキストとなります。
 

 融通がきいて当たり前

人間ですから体調の悪いとき、急用ができたときなど予約を取り消さなければならないときもあります。そんなとき快く振り替えの授業をセッティングしてくれなくては困ります。
 テキスト通り進めていても生徒さんがどうしても作らなければならない文書があったらそれを最優先させてあげるべきです。歯が痛くて医者に行ったら1週間後に来てくださいと言われたらどんな気分でしょう。まずは、痛みをとめてから予約をしてもらうのが当然です。相手の立場に立つとはそういうことだと理解しています。いつでも自由に行けるスクールというのも良さそうで意外に駄目なものです。
 人はある程度時間をしばられないとなかなか動けないところがあります。また、好きなときに行けるような場合、みんなが希望する時間帯に大勢の生徒さんが集中することになりがちです。そんな時パソコンの台数に見合ったインストラクターがいればいいのですが、そうでない場合、あまり見てもらえないことになってしまいます。

 インストラクターの説明がわかりやすいかどうか

   教える事を一度でも経験した事のある人ならお分かりでしょうが、教えるには相手の目線に自分を合せられる人でないと成功しません。例えばクラスには分からない事は手を挙げて聞ける人や、笑われるかもしれないと思ってしまい、なかなか聞けない人もいます。その人の性格をできるだけ速く見抜く能力も必要です。もう一つ大切なことがあります。教室内ではどんな失敗も許されるということです。授業の中ではどんどん失敗をしていただいていいのです。そうした失敗をたくさんしておけば、あとで実務のときにその失敗が生きてきます。
私たちのスクールは「失敗」と書いてそれを「経験」と読みます。
 これが逆に、テキストどおりの授業をやってしまい、ミスをさせないといざ一人で仕事に向かって困ったとき立ち往生します。先ほども書きましたが某メーカー系のスクールにもぐりこんだときは、皮肉な言い方をすれば、「人はどのように教わると分からなくなるのか」ということを学んだことに意義がありました。その点では無駄ではありませんでした。
 パソコンの用語は実にそっけなく冷たいものがあります。「不正な処理をしたので強制終了します」 これはくだけた言い方をすれば「あなたが行った操作を私は実行できませんでした。ごめんなさい。」というようなものです。こんな説明が欲しいところです。最近ようやく「ご迷惑をおかけしております」といった謙虚なメッセージを一部表示するようにはなりました。
 専門用語を乱発するインストラクターも困りものです。もちろん、インストラクターが深い知識を持っていることは大切ですが、パソコンで普通の作業をすることを考えている人にとって専門用語はそれほど重要です。こうしたインストラクターは知識をひけらかしたい人か生徒さんの立場で物を見ることができない人です。1、2ヶ月の研修でインストラクターを養成するなど不可能です。インストラクターとしての資質が備わっていなければ無理な話です。
 このての「即製インストラクター」が多すぎます。それから、もう一つ。EXCELのような表計算ソフトを教えるには算数や数学の初歩を上手に教えられる能力が求められます。「達成率」、「構成比」など特に割合の深い理解が必要です。

 インストラクターに資格は要らない!?  

パソコン関係の資格には様々な団体が主催するものがあります。多すぎてどれをとっていいのか迷うぐらいです。あのマイクロソフト社のMOT(マイクロソフトオフィシャルトレーナー)の資格が一般的には高く評価されています。筆者も昔、MOTを持った人にわざわざ教わったことがありますが(値踏みのために)、たまたま運が悪かったのかもしれませんが、あまり上手とはいえませんでした。知識の量はさすがでしたが…。(皮肉な言い方をすれば、良き反面教師ではありました。) それは教員資格を持った人が必ずしも教え方がうまいとは限らないのと同じです。 インストラクターに資格は要らない、されど実力は要る。というのが本音です。しかし、生徒さんが転職・就職などの際には前職でパソコンを使いこなしていた場合は別としてパソコンの資格をもっていた方が有利なことはまちがいありません。
  問題はどんな検定試験をとるべきかということです。時代遅れの検定試験をとってもほとんど意味がありません。時流にあったソフトの検定試験をとっておかないと時間もお金も無駄にしてしまいます。 時流にあったソフトとしては、WORD・EXCEL・ACCESS・POWERPOINTあたりでしょう。グラフィックス関係ではマック関連のソフトになります。 くれぐれも企業におけるシェアの低いソフトの検定試験をとらないことです。
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 最新のバージョンのソフトを教えればいいというものではない  

   ワープロソフトの代表のWORD、表計算ソフトのEXCELの例でお話しますと、現在の段階で(2018年12月現在)で使用するのに問題ないのは2010・2013・2016の3種類があります。4つのバージョンの中から選べるようにしています。なぜなら、パソコンを覚えて自宅でのみ扱う分には問題が起きませんが、会社で使おうとする方には困ることが起きる場合があります。
 会社では費用の問題から必ずしも最新のバージョンのソフトが入っているとは限らないからです。スクールで最新のバージョンのソフトで勉強してから会社で古いバージョンのソフトを触ってよく分からなかったということが起きかねません。 要はその生徒さんの状況を考えてソフトも選び、バージョンも選んであげることが大切です。
 パソコンの経験者に対してスクールのテキストを最初から勉強していただくことはありません。生徒さんの理解しておられる場所からスタートします。

 最も困る質問

 「文字入力とインターネットをみたり電子メールをやり取りするのに大体何回ぐらいかかりますか?」。はじめによくきかれることで最も困るのがこの種の質問です。
 もちろん、各コースで何回ぐらいかかるか案内書にも明示してありますが、これはあくまでも目安に過ぎません。その方のご年齢、性別、ワープロをさわったことがおありかどうか、パソコンをお持ちかどうかなどがかかる時間数に関係してきます。
 そこでよくこんなたとえ話をお話します。
 旅人が畑仕事をしている農夫に町まで何分ぐらいかかるかを尋ねると、農夫は「まず、歩いてみなされ」と答えます。何度きいても同じ返事なので旅人は怒って歩き始めますが、しばらくすると後ろの方で農夫が「あんたの足なら一時間ぐらいかかるよー」と大声でさけんでくれます。
 この話と先ほどの質問に対する答えはよく似ています。実際にその方がキーボードと向き合いマウスも触られるのを拝見しないとなかなかはっきりとは申し上げられないのです。決められた時間内で必ず何回で終わるという講習会スタイルでしたら回数ははっきりするのですが、それでは習う方の個人差を無視することになってしまいます。生徒さんの理解の程度を把握しながら先に進むのが(時には戻ることもありますが)私どものスクールの変わらぬ主義です。

 

 厚生労働省の教育訓練給付制度

  厚生労働省の教育訓練給付制度というのがあります。 これは厚生労働省が認定した教育機関で一定期間、一定の講座を修了した場合、学習後にかかった費用の8割(平成15年4月末まで。以後4割または2割)を国が負担してくれる制度です。
   この制度を私どものスクールに取り入れるかどうかを検討するためにパンフレットを請求しじっくり読みました。また、説明会にも参加しました。慎重に検討した結果、私どもの主義に合わないので見送りました。見送った理由を以下に箇条書きで記します。
①初歩的な学習に対しては支給されない。
②振替授業がきかない。(出席率が厳しいのに)
③今現在の生徒さんに対して不公平
④定められたカリキュラムが、満足できる内容になっていない
 税金から給付金は支給されるわけですからこうした制約があるのもうなずけます。 この制度をパソコンスクールなどの教育施設に対する営業支援策だという人がいますが、まったく同感です。
 また、こうしたいわゆるとりっぱぐれのない仕事をしていると何時の間にか自分で考え工夫をするといった努力をしなくなる恐怖感を覚えます。生徒さんが分かろうと分かるまいと国からお金がでるわけですからサービスの方も落ちて当然でしょう。
 平成14年8月の新聞記事に厚生労働省の教育訓練給付制度対象のスクールに対して、卒業生の就職率の著しく劣る場合は認定の取消をするとありました。競争原理を働かせて教育の内容を上げようということでしょうが、私どもの主張を裏付けていると思いました。

 教えるということはサービス業だ

   教えるという作業を一段高いところから教授するといった勘違いをしている人がいますが、学校教育と同じ感覚でパソコンを教えられたら習う方はたまったものではありません。
   パソコンスクールも当然の事ながらサービス業の一種です。ものを売るわけではありませんから当たり前のはなしです。いわゆる「分かってもらってなんぼ」の世界です。そこへ何か勘違いしたインストラクターが登場して好き勝手に振る舞われたらたまったものではありません。
 政府が実施するIT教育推進のためのパソコンの講習会も自治体からのお誘いがありましたが検討の結果見送りました。というのも1、2回の講習でワープロソフトからインターネットまで使えるようになるとは思えなかったからです。しかも同時に教えるのがなんと20名です。一人一人に丁寧にとはいきません。国からのパソコンスクールに支給される謝礼というのもここでは書けませんがかなり大きな金額です。もっと他に税金の使い方があるような気がしてなりません。
 この講習会がパソコンに触るきっかけを与えることになったとすれば幸いですが、逆にパソコン嫌いにさせる危険性もはらんでいたと思います。

※当スクール発行の『失敗しないパソコンスクール選び』より
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